子宮奇形

 

子宮奇形とは?

正常の子宮の外観は、前後にややつぶれた洋なしを逆さまにしたような形をしており、内腔は三角状になっています。 正常な子宮
ところが、子宮の外観が左右ふたつに完全に分かれていたり(重複子宮)、途中から分かれていたり(双角子宮)、外観は正常でも内腔のみが左右に分かれていたり(中隔子宮)することがあります。これらを子宮奇形といいます。
子宮奇形は全女性のおよそ5%にみられます。
重複子宮 双角子宮  

中隔子宮

重複子宮 双角子宮 中隔子宮
弓状子宮 単角子宮 副角子宮
弓状子宮 単角子宮 副角子宮

 

子宮奇形の症状
 

子宮奇形は習慣流産、不妊症、早産、難産などの原因になることがあります。しかし、子宮奇形があっても正常に妊娠・分娩となることも少なくありません。
子宮奇形の種類によっては、月経痛下腹部痛性交時の痛みなど原因になることがあります。

 

子宮奇形の診断法
 

子宮奇形が疑われる場合には、子宮鏡検査(細いファイバースコープで子宮の内腔をのぞく検査)や子宮卵管造影法(子宮の内腔に造影剤を入れて、子宮の形や卵管の通過性をみる検査)を行って診断します。しかし、これらの検査では子宮の内腔の形はわかりますが、子宮の外観はわかりません。子宮の外観は超音波検査MRIでみますが、確実なことはわかりません。このため、必要があれば腹腔鏡検査を行います。
また、子宮奇形に腎臓や尿管の奇形が合併することがあります。子宮奇形がある場合には、超音波検査や腎臓や尿管の造影検査を行い、腎臓や尿管の奇形がないかどうかをみます。

 

子宮奇形の治療法
 

子宮奇形の治療法は手術です。
しかし、子宮奇形があっても正常に妊娠・分娩できることが多いので、必ず治療が必要なわけではありません。一般的には、不妊症でなく、流産や早産をしたことがない場合には、様子をみることとなります。また、子宮奇形がある方が不妊症であったり、流産や早産をしてもその原因が子宮奇形にあるとはかぎりません。手術をするかどうかは、医師とよく話し合って決めた方がよいでしょう。
次のような場合は手術をすることがあります。
1) 流産や早産を繰り返す双角子宮や中隔子宮の場合
2) 他に明らかな原因のない不妊症の場合
3) 下腹部痛などの症状が子宮奇形と関係していると考えられる場合
子宮奇形の手術方法は、その奇形の種類によって違います。
双角子宮では、開腹して(下腹部を切って)手術を行います。
中隔子宮では、開腹して手術を行うこともありますが、腟の方から子宮鏡でみながら手術する方法(子宮鏡下手術)もあります。
重複子宮など、一部の子宮奇形は治療の必要がありません。
このため、どういう手術をするをか決めるため、手術の最初に腹腔鏡検査で子宮の外観を観察し、子宮奇形の種類を診断してから、手術を行うことがあります。
また、子宮奇形の他に腟中隔(腟に隔壁がある)がある場合には腟中隔を切除します。

 


流産

 

流産とは?

妊娠21週までに、何らかの原因で妊娠が終了してしまうことをいいます。自然流産と人工流産(人工妊娠中絶)に分けられますが、自然流産は全妊娠の約15%におこり、そのうちのほとんどは妊娠11週までにおこります。

 

流産の原因

妊娠11週頃までの初期流産の原因は、約70%が胎児の染色体異常によるものです。これは、一種の自然淘汰とも考えられます。女性の年齢が高くなるほど流産率が上昇しますが、これは主に、女性の年齢とともに受精卵が染色体異常である頻度が増えることと関係します。
その他の原因として、子宮奇形などの子宮の形態異常、卵巣や甲状腺などのホルモン分泌異常、自己免疫疾患、細菌感染などでも流産がおこることがあります。二度三度と流産を繰り返す(習慣流産)ようであれば、このような異常がないかを系統的に検査した方がよいでしょう。
妊娠中期になると流産の頻度は大きく減少しますが、この時期には、子宮の入り口が自然に開いて流産することがあり、これは頚管無力症と呼ばれます。
また、原因不明の流産もまれではありません。

 

流産の症状

流産の症状には子宮出血や下腹部痛があります。しかし、出血や下腹部痛があっても(切迫流産といいます)、流産になるとは限りません。切迫流産では、赤ちゃんの心拍が認められれば多くは妊娠を継続することができます。
逆に、全く無症状でも、超音波検査で流産と診断されることもしばしばあります。
流産は、はじめは子宮出血や下腹部痛がないか、あっても軽度ですが、いずれ子宮内の妊娠組織は子宮外に出てきます。妊娠組織とは、胎児と臍帯、絨毛(妊娠中期以後は胎盤と呼びます)などの胎児由来の組織と、脱落膜という子宮内膜が変化した母親由来の組織とがあります。

 

切迫流産の治療法

切迫流産の場合はhCGと呼ばれるホルモン剤を注射することもあります。しかし、妊娠初期の流産の多くは胎児の染色体異常が原因で、この場合は治療法はありません。また、妊娠前から胎児の染色体異常を防止する方法もありません。
出血をしたときに、超音波検査で子宮の中に血液がたまっている状態が観察されるときは、安静を必要とします。超音波検査で流産が疑われるときは、数日から1週間程度の間隔で再検査します。
また、正常妊娠の初期には、絨毛から作られるhCGが次第に増加していきますので、血液や尿の検査によりhCGの変化をみることもあります。
夜間、休日など緊急で病院を受診する目安としては、月経のピーク時と同じくらいの出血量や強い下腹部痛があるときと考えてください。

 

流産の治療法

完全流産(妊娠組織が全部子宮外に出た場合)を除いて、子宮内から妊娠組織をとり除く処置が必要で、これは通常、子宮内容除去術または流産手術と呼ばれます。子宮内容除去術は5〜10分程度で終わります。

 

流産後について

もともと月経が順調に来ていた方は、流産後1〜2カ月以内に月経が再開します。流産後は月経が数回来てから、あらたな妊娠を試みるようにします。

 

流産絨毛の染色体検査について

妊娠初期の流産の原因の約70%は、胎児の染色体異常です。
虎の門病院では、希望される方には、流産手術の際にとり出した妊娠組織の一部(絨毛)を用いた胎児の染色体の検査を行っています。新鮮な絨毛を子宮内からとり出してすぐに処置するために、当院で手術を受けた方のみが対象となります。この検査を行える病院はきわめて限られているため、他院で流産の診断を受けてこの検査の希望がある方は、診断を受けた病院の医師から紹介状をもらって受診していただくとよいでしょう。なお、検査の結果が出るまでには、約1カ月かかります。
検査によって、今回の流産の原因が染色体異常であったどうかがわかりますが、胎児の染色体異常は、多くの場合、両親の染色体異常とは関係がありません。卵子、精子が作られ受精していく過程で、誰にでも一定の確率でおこりうるものです。この検査を受けたからといって、次回妊娠時に胎児の染色体異常が予防できるということではありません。

 


子宮外妊娠

 

子宮外妊娠とは?

子宮内腔以外に着床したすべての妊娠を子宮外妊娠といいます。
以前は妊娠全体の約0.5%におこりましたが、最近では1.5%前後にまで増加しているといわれています。
子宮外妊娠のほとんどは卵管におこります(卵管妊娠)が、他に、卵巣や腹膜などに妊娠することもあります。子宮頚管(子宮の入り口)に妊娠した場合も胎児は正常に発育することはできず、子宮外妊娠としてとり扱われます。

 

子宮外妊娠の原因

卵子と精子は卵管膨大部という卵管のなかで出会って受精し、受精卵は卵管の働きにより子宮内に運ばれ子宮内膜に着床します。
卵管の炎症や癒着などその働きが妨げられると、受精卵が子宮内に運ばれる途中で卵管内膜に着床し、子宮外妊娠になります。この炎症や癒着はお腹の手術や虫垂炎などでもおこりますが、最近はクラミジアを中心とした性感染症が原因と考えられる場合が増加しています。しかし、原因不明の場合も少なくありません。

 

子宮外妊娠の症状

子宮内の妊娠と違って、卵管妊娠では妊娠組織がどんどん膨らんで大きくなることはできません。着床した当初は無症状でも、ある時期(妊娠5週から9週ぐらい)になると、着床部位の卵管の壁が破裂したり、妊娠組織が卵管内から腹腔内に流れ出てたりして、腹腔内の出血、下腹部痛や子宮出血がおこります。腹腔内出血はときに1000mlから2000ml以上にもなり、生命に危険をおよぼすこともあります。
下腹部痛は突然激しくおこることもありますが、最初は比較的軽い症状が数日以上続くこともあります。
子宮出血はあまり多くはない場合がほとんどです。

 

子宮外妊娠の診断法

腹腔内に大量の出血をおこす前に診断し、治療を行うことが大切です。
正常妊娠では、妊娠4週後半〜5週頃になると超音波検査で子宮内に赤ちゃんが育つ胎嚢と呼ばれる小さな袋がみえてきます。この時期(正確な妊娠週数の確認には、基礎体温表があると参考になります)を過ぎても胎嚢がみえてこない場合は子宮外妊娠を疑います。
妊娠5〜6週頃になると、超音波検査で子宮の外に胎嚢と思われる袋がみえたり、さらにそのなかに胎児がみえることもあります。しかし、子宮外の胎嚢を確認できずに診断が難しいことも少なくありません。
すでに腹腔内に大量の出血がおこっている場合は、超音波検査や、腟からお腹の中に針を刺して出血の有無を確認することで比較的簡単に診断できます。お腹のなかに出血がある場合は、緊急手術を必要とします。
ごくまれには、双子が子宮内と子宮外それぞれに同時に妊娠しているようなこともあります(子宮内外同時妊娠)。
妊娠組織から分泌されるhCGというホルモンの血中や尿中の濃度も子宮外妊娠の診断に参考となります。超音波検査やhCGの測定でもはっきり診断がつかないときは、子宮内膜掻爬術腹腔鏡検査を行うこともあります。

 

子宮外妊娠の治療法

治療は原則として、手術による妊娠組織の除去(子宮外妊娠の手術)を行います。
1) 卵管妊娠の手術は、妊娠している卵管を切除する方法と保存する方法とに分けられます。
2) 子宮頚管に妊娠している場合は、妊娠組織の除去手術により止血困難な大量出血をおこす可能性があり、妊娠組織の死滅による自然吸収を目的として、メトトレキサートという薬を注射することがあります。
3) 手術をせずにメトトレキサートを使う治療法もありますが、効果は一定していません。
メトトレキサートは抗がん剤の一種で、口内炎や悪心・嘔吐などの副作用がおこることがあります。
4) 経過観察のみで妊娠組織が自然に吸収されてなおる場合もあるといわれています。しかし、突然の大量出血の危険もあり、多くの場合では手術が必要です。

 


胞状奇胎(ほうじょうきたい)

 

胞状奇胎とは?

妊娠初期の子宮内には、将来、胎盤になる絨毛という組織が作られます。この絨毛が増殖異常をおこすと胞状奇胎という病気になることがあります。俗に「ぶどうっ子」と呼ばれることもあります。日本では妊娠数500例に対して1例程度発生します。
全胞状奇胎と部分胞状奇胎に分類されます。手術後の管理が悪いと後になって、全胞状奇胎の約10%、部分胞状奇胎の約2〜3%には、侵入奇胎や絨毛がんといった全身に転移する可能性がある悪性度の強い腫瘍が発生することがあります。最近では厳重な管理と早期発見により頻度は減少してきています。
全胞状奇胎と部分胞状奇胎は次のような違いがあります。いずれも受精の際におこる異常が原因となります。

1)

全胞状奇胎
子宮内の妊娠組織すべてが腫瘍化し、胎児成分が一切含まれていないものです。多くは雄核発生という染色体異常が原因です。雄核発生の大部分は、卵子のなかの核が排出または不活化されて、細胞質だけになったところに精子がはいりこみ核分裂をしたもので、染色体数は正常でも精子由来の染色体のみから構成されています(2倍体雄核発生)。

2)

部分胞状奇胎
妊娠組織の一部が腫瘍化し、同時に、胎児またはへその緒の成分も含まれるものです。多くは染色体異常を認め、その中で一番多いのは3倍体と呼ばれるものです。3倍体の胎児ができる原因の多くは、ひとつの卵子にふたつの精子が入りこんで受精したものです(2精子受精)。

 

胞状奇胎の症状

普通の妊娠や切迫流産と比較して、胞状奇胎に特有の症状はありませんが、不正出血や強いつわりがあることがあります。

 

胞状奇胎の診断法

妊娠初期の超音波検査で胞状奇胎を疑うことがあります。しかし、超音波検査ではわからず、通常の流産の診断で子宮内容除去術(いわゆる掻爬)を行い、妊娠組織を確認して始めて胞状奇胎とわかる場合も少なくありません。
また、胞状奇胎の診断や治療効果の判定には、胞状奇胎から作られる血液中や尿中のhCG(絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの量が参考になります。hCGは正常の絨毛組織からも産生されます。

 

胞状奇胎の治療法

腫瘍化した組織を子宮内から完全に除去する処置(子宮内容除去術)を行います。その後はhCGの量を定期的に測定し、一定値以下に下がっていくのを確認します。
hCGの量がなかなか下降しないときには、メトトレキサートという薬を使うことがあります。
治療がうまくいっていると、卵巣機能が回復し排卵がおこるので、基礎体温で排卵を確認することも経過をみる上で大切なことです。
治療が一段落したあとも、医師の指示にしたがって経過をみる必要があり、自己判断で通院を中止してはいけません。

 


習慣性流産

 

習慣性流産とは?

日本産科婦人科学会の規定では連続3回以上の流産を習慣性流産といいますが、虎の門病院では2回以上流産した場合に検査や治療を行っています。
1回流産をする確率は、年令によってもかわりますが、15〜20%ぐらいです。流産の原因は、胎児に異常があるために自然淘汰的に流産をすることが最も多く、流産の約70%をしめています。このため、1回の流産で流産の検査や治療の必要はほとんどありません。
2回以上つづけて流産する確率は約4%です。この中には、偶然つづけて流産する方もありますが、ご夫婦に特別な原因のある場合もあります。
今までに2回流産をした方の次の妊娠が流産しないで継続する率は約75%、3回流産した方の場合は55%です。このように流産を反復したことがあっても、半数以上の方の妊娠は継続しますが、検査によって異常がみつかり治療できれば、妊娠が継続できる率がより高くなる可能性があります。

 

習慣性流産の検査

1)

一般血液検査
妊娠に影響するような全身的な病気がないかを調べます。

2)

染色体検査
習慣性流産のカップルの場合、カップルのどちらかに均衡型転座染色体異常がみられることがあります。2回流産した場合に4%、3回流産した場合に7%のカップルにみられます。

3)

甲状腺機能の検査
甲状腺の機能の亢進や低下があると流産しやすくなります。血液で検査をします。

4)

糖代謝についての検査
糖の代謝に異常があると流産しやすくなります。典型的な場合は糖尿病です。糖負荷試験といって、ブドウ糖を飲んで、その前後で何回か採血をして、血糖の変動をみます。

5)

異常な抗体の検査
異常な抗体(抗カルジオリピン抗体とかループスアンチコアグラントと呼ばれます)があると、そのために胎盤の働きが低下し流産します。

6)

感染症の検査
トキソプラズマやクラミジアなどの感染症は流産の原因となるともいわれています。トキソプラズマやクラミジアの抗体の検査と腟の中にいる細菌の種類を調べます。

7)

卵巣機能検査
黄体ホルモンが少ない場合(黄体機能不全)は、うまく着床できず、流産がおこることがあります。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれる状態があると流産しやすくなります。
血液中のホルモン値を検査(ホルモン検査ホルモン負荷試験)したり、ときには超音波検査を行います。血液中のホルモン値は変動するため何回も検査をすることがあります。

8)

子宮の形をみる検査
子宮の内腔に中隔子宮や双角子宮といわれる子宮奇形があったり、子宮筋腫などがあると流産しやすくなります。虎の門病院では子宮の形をみる検査として超音波検査と子宮鏡検査を行っています。子宮鏡検査は細いファイバースコープで子宮内腔を直接観察する検査です。これらの検査で問題がある場合には、子宮卵管造影法を行うこともあります。

9)

HLA(主要組織適合抗原)検査
HLAとは、自分のものか、違うものかを識別している細胞についている信号のひとつです。たとえば、からだに心臓や腎臓が移植された場合、普通は移植した臓器をHLAの違いによって「自分のものでない」と認識し、排除します。これを拒絶反応といいます。心臓や腎臓の移植を行う場合は、HLAの似ている人を探し、「自分のものでない」という認識がおこらないようにします。
ところで、普通、胎児に対しては拒絶反応が働きません。おそらく、胎児をお母さんの免疫系が胎児として認識することによって、胎児を保護するための「バリア」ができ、これにより、免疫学的に異物である胎児が、拒絶反応を受けないで妊娠が継続すると考えられています。HLAが似ていると、「自分のものでない」という認識がなされず、バリアがうまくつくれない結果、流産してしまうという説があり、習慣性流産ではHLA検査が行われます。
しかし、現在では、必ずしもHLAと習慣性流産との間に関連がないとの考え方も強くなっており、HLAの検査の意義は不透明な状態です。

10)

頚管無力症
子宮の入口を子宮頚管といいます。頚管は、普通、妊娠満期近くにならないと、開いてきませんが、陣痛もないのに満期になる前に頚管が開いてしまい、破水や流産、早産をおこすことがあります。このような状態を頚管無力症といいます。
頚管無力症について、妊娠していないときに検査する方法はありません。妊娠中ならば、子宮収縮がないのに頚管が開いていないかを診察したり、超音波検査で頚管の開き具合をみたりします。また、過去に4カ月以降の流産や早産があり、その妊娠中に子宮収縮がないのに頚管が開いていた場合には、頚管無力症を考えます。

 

習慣性流産の治療法

習慣性流産の検査を行うと、約半数の方に異常がみられます。それらの方は、それぞれの治療を行います。

1)

染色体異常について
3回以上流産をした習慣性流産のカップルに血液染色体検査を行うと、約7%のカップルのいずれかに均衡転座型染色体異常がみつかります。均衡型転座染色体異常とは、染色体の一部が他の染色体に結合(これを転座と呼びます)した染色体異常です。ご本人は染色体部分の過不足がないため、均衡型転座染色体異常があっても異常はみられません。しかし、子どもにはそのために染色体部分の過不足がおこることがあります。カップルのどちらかに均衡型転座染色体異常がある場合は、染色体正常、カップルと同じ均衡型転座染色体異常、染色体の一部に過不足のある不均衡型転座染色体異常のいずれかの子どもを妊娠することになります。不均衡型転座染色体異常のある受精卵は育ちにくく、妊娠とわからない時期に消滅してしまったり、自然流産になったりします。生まれた子どもに奇形や発育障害、精神運動発達遅滞などがみられることもあります。
ただし、習慣性流産のためにみつかった均衡型転座染色体異常のカップルの場合には、自然流産に至らずに妊娠が継続した場合、不均衡型染色体異常がある子どもが生まれる率は5%前後とあまり高率ではありません。

2)

甲状腺機能の異常に対する治療
甲状腺機能の異常が認められた場合には、基本的には内科で治療をすることになります。主には薬物療法が行われます。

3)

糖代謝の異常や糖尿病の治療
内科で治療をすることになります。生活指導や食事療法、薬物療法が行われます。

4)

異常な抗体に対する治療
抗核抗体や抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなどの異常抗体が高値のときには、そのために胎盤の血管が障害されて流産になることがあります。
胎盤の血管が障害されると、血液が凝固し、胎盤への血流が少なくなります。このため子どもが育たなくなり、お腹の中で赤ちゃんが亡くなると考えられています。
血液が凝固しないように、アスピリンやヘパリンといった薬を投与し、異常抗体そのものを減少させるために、プレドニンという副腎皮質ホルモンを投与します。
また、異常抗体が極めて高値の場合には、膠原病という病気がかくされている場合もありますので、この場合には内科を受診していただいています。

5)

卵巣機能異常の治療
黄体機能不全や多嚢性卵巣症候群(PCOS)では流産が多いことがわかっています。
黄体は、排卵後の卵胞(卵をいれている袋)からつくられるため、黄体機能不全は卵胞の発育が悪い方に多くみられます。このために排卵誘発剤(クロミッドなど)や黄体ホルモンを投与します。
多嚢胞性卵巣症候群の方の場合には、卵巣に卵胞が多くみられるものの、発育が悪かったり、排卵しないことが多いため、排卵誘発剤の投与が行われます。

7)

子宮筋腫の治療
大きな子宮筋腫があったり、小さくても粘膜下筋腫のように、子宮の内腔に子宮筋腫があって、そのために子宮内腔が変形している方では、流産の原因になることがあります。子宮筋腫が流産の原因のひとつになっていると判断される場合や、その他、子宮筋腫が胎児の発育を障害する可能性がある場合は、筋腫だけをとる手術を行います。
漿膜下筋腫や筋層内筋腫では開腹して子宮筋腫のみをとる子宮筋腫核出術が行われます。
粘膜下筋腫の場合には、内腔に突出した子宮筋腫を子宮鏡でみながら削りとる方法(子宮鏡下手術)や突出した筋腫を茎部(内腔に突出した筋腫と子宮をつないでいる部分)で捻りとる方法などがあります。しかし、粘膜下子宮筋腫でも大きい場合や子宮筋腫の茎部がはっきりしない場合は開腹手術が行われます。

8)

子宮奇形
双角子宮、中隔子宮は流産の原因となります。このため、手術療法が行われます。
双角子宮では開腹して子宮の形を形成する手術を行います。
中隔子宮では、子宮鏡で中隔を直接みながら切断します(子宮鏡下手術)。
しかし、双角子宮と中隔子宮とは手術前にどちらであるか診断がつかないことが多いため、多くの場合にこれらの手術の前に腹腔鏡検査で区別し、引き続いて手術が行われます。

9)

リンパ球輸血
流産の回数が多い場合や、原因不明の場合、カップルのHLAが似ている場合に、リンパ球輸血が行われることがあります。リンパ球輸血とは、一般には男性側の血液中のリンパ球という成分だけを分離して女性側の腕に皮内注射をします。虎の門病院では、通常、2週間に1回、計4回行っています。
虎の門病院での成績では、2回流産した方のリンパ球輸血後の妊娠の継続率は約88%(一般には75%)です。また、3回流産した方のリンパ球輸血後の妊娠の継続率は約78%(一般には55%)です。このように習慣性流産の方にリンパ球輸血が有効と考えられますが、最近では無効とするデータも出てきました。また、カップルのHLAが似ているときにリンパ球輸血が有効で、似ていないときには無効かというと、必ずしもHLAとの関係もはっきりしていません。このため、虎の門病院では、カップルのHLAが似ている、似ていないにかかわらず、症例に応じてリンパ球輸血を行っています。
リンパ球輸血の副作用としては、肝炎ウイルスなどの感染症をご主人がお持ちの場合にリンパ球輸血で奥様にうつる可能性があります。また、奥様に膠原病などがある場合には、リンパ球輸血を行うと問題を引きおこすことがあります。

10)

頚管無力症
頚管無力症では、妊娠中に子宮頚管(子宮の入口)をしばる手術(頚管縫縮術)を行います。しかし、頚管縫縮術をしたにもかかわらず、子宮の入口が開いてきたり、破水したりすることもあります。また、手術時に破水することもあります。手術を行うかどうかはかかりつけの医師とよく相談をする必要があります。

 


頸管無力症

 

頸管無力症とは?
 

妊娠した子宮は大きな風船を逆さにしたようなもので、中には数kgの赤ちゃんと羊水が入っています。風船の入り口にあたるところが子宮頸管で、この部分で赤ちゃんや羊水の入った袋をささえています。この部分が弱くなって、妊娠中にお腹がはることがなくても子宮口が開いてくる病気が頸管無力症です。 CXINCOMP.gif (3015 バイト)
流産や早産の原因になります。
頚管無力症そのものの概念や診断法・治療法については未だ議論の多いのが現状です。
前回頸管無力症であった方、子宮頚部円錐切除術後の方、子宮奇形のある方、何度も人工妊娠中絶をしている方などが頸管無力症になりやすいともいわれていますが、はっきりとはしていません。

 

頸管無力症の症状
 

多くの場合無症状ですが、下腹部や腰のなんとなく重い感じや水っぽいおりものなどあることもあります。

 

頸管無力症の診断法
 

妊娠前や妊娠初期に診断することはできません。流産や早産になるまで診断できないこともあります。妊娠半ばに下腹部や腰のなんとなく重い感じや水っぽいおりものがある場合、内診や超音波検査で、頚管の形状や開きぐあいなどを検査して診断します。

 

頸管無力症の治療法
 

頸管縫縮術という子宮の入り口をテープでしばる方法があります。

 


 

前置胎盤

 

前置胎盤とは?

胎盤が、子宮口を内側からおおっていることを前置胎盤、子宮口のすぐ近い位置にあることを低位胎盤といいます。
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前置胎盤 低位胎盤
妊娠中にお腹がはることや陣痛などにより、子宮口が開いてくると、胎盤の一部が剥がれ、胎盤付近の血管から大量出血(お母さんの血液)することがあります。妊娠の初めころには高い頻度で前置胎盤がみられますが、妊娠が進むにつれて胎盤は上の方に移動し、分娩時での頻度は200〜300人に1人とされています。

 

前置胎盤の症状

ある時期までは症状はありませんが、妊娠28週(8カ月)ごろから、お腹の痛みを伴わない大量出血が突然おこることがあります。出血の量があまり多くない場合もあります。
出血する時期を予測することはできません。

 

前置胎盤の診断法

多くは、出血がおこる前に超音波検査で発見可能です。しかし、出血がきっかけで診断される場合もあります。
くわしく調べるために、MRIと呼ばれる画像検査を行うこともあります。

 

前置胎盤と診断されたら

虎の門病院では、前置胎盤と診断した場合は、妊娠7〜8カ月ごろに入院していだだきます。入院の目的は、安静にして出血の時期をなるべく遅くするためと、出血した場合に帝王切開術などの対処が迅速にできるようにするためです。
入院後は経過をみながら、帝王切開術がよいか経腟分娩が可能かなどを判断しますが、ほとんどの場合は帝王切開術が必要です。帝王切開術は、出血しない場合や少量の出血が断続的にあるなどの場合は妊娠37週ごろ行います。大量出血がおこれば妊娠週数にかかわらずその時点で行います。
前置胎盤の方の帝王切開術では、手術中の出血量が多くなることがあります。まれに子宮をとらなくては出血が止まらないこともあります。
大量出血がおこった場合や帝王切開術の時に、輸血が必要になる可能性が高いので、自己血貯血という方法でなるべく他人からの輸血を回避する方法がとられることがあります。

 


 

妊娠中毒症

 

妊娠中毒症とは?
 

妊娠中毒症とは妊娠中に血圧が高くなったり、尿に蛋白がでたり、全身がむくんだりする病気です。
昔、妊娠により体内に出る未知の物質による中毒と考えられていたので、妊娠中毒症という病名がついたようです。食中毒のようないわゆる中毒ではありません。
妊娠中毒症の原因は不明です。また、有効な予防法もありません。

 

妊娠中毒症の症状
 

妊娠中毒症は、家系に妊娠中毒症にかかった方のいる方、もともと高血圧症のある方、多胎妊娠、糖尿病のある方、腎臓病のある方などにおこりやすくなります。
妊娠中毒症が進行し血圧が高くなると、頭痛、目のちらつきやかすみなどがあらわれることがあります。また、尿に蛋白が多くでるようになると全身がむくんできます。

 

妊娠中毒症の診断法
 

妊婦健診時に血圧を測定し尿検査をする理由は、妊娠中毒症を発見することにあります。
血圧は落ち着いた状態で座って右腕で測定します。血圧は上が140mmHg以上、下が90mmHg以上の場合は妊娠中毒症の可能性があります。30分ほど安静にしてふたたび血圧を測ります。
尿検査で蛋白の有無をみます。尿蛋白が(+)以上ならば正確にその量を測ります。
むくみに関してはそれだけでは妊娠中毒症とはいえません。特に下肢だけがむくんでくるのは妊娠の正常な経過です。顔や手や全身がむくむ場合は注意が必要なことがあります。

 

妊娠中毒症と診断された場合に行う検査
 

血圧や尿蛋白は頻回に検査します。
肝臓や腎臓の機能、血液凝固機能(出血しやすい傾向にあるかどうか)も血液検査で調べます。
赤ちゃんの状態をみる検査には、分娩監視装置を使った胎児心拍数モニターや超音波検査があります。超音波検査では、羊水量や調べたり赤ちゃんの発育が遅れていないかなどを検査します。超音波検査で赤ちゃんの太い血管の血流を測ることもあります。

 

妊娠中毒症の治療法
 

まず入院をして安静が必要です。絶対安静ではありませんが、安静だけでも血圧や尿蛋白は改善します。
血圧が高い場合は血圧をさげる薬を内服または点滴します。
子かん発作(全身の痙攣発作)の予防のためにマグネゾールという薬を点滴することがあります。
ほとんどの場合、妊娠中毒症は分娩するとよくなります。妊娠中毒症がひどい場合やそのために赤ちゃんの状態がよくないなど場合は、妊娠中毒症の治療のために早めに分娩することもあります。お母さんや赤ちゃんの経過をみながら分娩する時期や分娩方法(経膣分娩か帝王切開術か)を決めます。