肝癌とは?

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  • 肝癌とは

    肝癌には、肝臓から出現した原発性肝癌と他の臓器の癌が肝臓に転移した続発性肝癌(転移性肝癌)があります。原発性肝癌の約85〜90%を肝細胞癌が占め、約10%が胆管細胞癌です。その他、肝細胞癌と胆管細胞癌の混合型肝癌や肝芽腫などまれな腫瘍があります。一般的に肝癌というと原発性肝癌、特に肝細胞癌を指すことが多いです。

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    肝癌の患者数

    わが国では年間約3万5000人の肝癌死亡者がおり、男性では肺癌・胃癌に次いで第3番の癌死の順位となっています。これまで死亡者は増加の一途でしたが、現在では肝癌の年間発症率は横ばいになりつつあります。

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    肝癌の発症メカニズム

    肝細胞癌は他臓器の癌と異なり、基礎疾患として慢性肝疾患(慢性肝炎または肝硬変)が存在していることが多く、長期に「肝細胞の破壊・再生を繰り返すこと」が肝癌発癌の大きな原因と推定されています。B型肝炎感染例では、ウイルスそのものが発癌を起こしうるとも考えられています。

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    肝癌の原因

    わが国では、肝細胞癌患者の多くがB型またはC型肝炎ウイルスを有し、一部の患者は大酒家です。このような「肝硬変を起こしうる原因」は、同時に「肝細胞癌を起こしうる遠因」となっています。肝障害が全くない人に肝癌ができることはまれです。すなわち、肝癌の発生母地は慢性肝炎・肝硬変といった慢性肝病変であり、その多くがB型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスの持続感染者であると言え、肝癌発生の高危険群(ハイリスク・グループ)を絞り込むことが比較的容易です。
    B型慢性肝炎患者を経過観察すると、年率約0.5%の発癌者がみられ、10年後には5%の患者に肝癌がみられます。
    C型慢性肝炎患者では、年率1%強で10年後には13%、に発癌がみられ、10年経過以後は年率1.5%と発癌率曲線がやや急峻となっています。
    肝硬変患者からの発癌率は慢性肝炎のそれよりも明らかに高く、B型肝硬変からの年率発癌率は約3%で、10年後には30%の発癌率を示します。一方、C型肝硬変からの年率発癌率は5〜7%と、B型肝硬変よりも高く、10年後には半数以上の症例が肝癌発癌に至っています(右上図)。

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    肝癌の分類

    肝癌の進行度は、肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会第4版、2000年)で、肝癌進行度分類(stage)として分類されており、国際的な(UICCの)TNM分類とほぼ同様である。

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    肝癌の臨床症状

    腹部超音波・X線CT・MRIなどの検査で検出された直径5cm以内の肝癌であれば、通常無症状です。直径が5cm〜10cmの肝癌となると、腹部膨満感・腹痛などの症状を起こすことがあります。肝癌が増大するに伴って、肝機能が低下することが多く、背景疾患である「肝硬変が悪化した症状」として、黄疸・腹水増強などを示すことが多くあります。肝癌が小型であっても、肝癌破裂をおこして腹腔内出血を来たすと、腹部の激痛と血圧低下を起こします。

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    肝癌の診断

    肝癌の診断は、腫瘍マーカーと画像診断によって行われます。
    AFP(アルファ胎児性蛋白、α-fetoprotein)は、慢性肝疾患でも変動することがありますが、50〜100ng/ml以上の高値になると肝癌が疑われます。PIVKA-II(「ピブカー・ツー」と読まれる)は3cm以内の小型肝癌では陽性率が低いですが、陽性例では肝癌であることがあります。
    直径2〜3cmの小型肝癌で発見するためには、腹部超音波検査(US)(右図1)・CT(右図2)・MRIなどによる定期的な画像診断によるスクリーニングを行います。肝癌は多くの例が慢性肝疾患に出現するため、慢性肝炎・肝硬変症例に対象をしぼって、年数回の検査が行われます。
    これらの画像診断により肝臓内に腫瘤が発見された場合には、血管造影を含む質的診断が行われます。直径2cmを超える大きさであれば、血管造影で典型的な「腫瘍濃染」像がみられ(右図3)、容易に診断できます。直径2cm以下の肝癌の中には、腫瘍の性格がおとなしい高分化型肝癌を含んでおり、通常の画像診断で肝癌であるとの確定診断が困難なことがあります。この場合には、細径針腫瘍生検を行って組織診断を行います。


    図1:腹部超音波検査でみた肝細胞癌

    図2:X線CTでみた肝細胞癌

    図3:血管造影でみた肝細胞癌

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    肝癌の治療

    肝細胞癌の治療法としては、
    @外科的肝切除
    A経皮的エタノール局注療法(PEIまたはPEITと略)
    B経皮的マイクロ波凝固療法(PMCTと略)
    Cラジオ波凝固療法(RFAと略)
    D肝動脈塞栓療法(TAEと略)
    などがあります。
    肝癌は直径2〜3cmの大きさになると、門脈経由で肝内各所に転移を始めます(肝内転移多発)。一方、肝癌症例は基礎疾患として慢性肝疾患、とりわけ肝硬変を有していることが多く、いったん根治的に切除しても、新規の発癌を起こして再発することも多くあります(多中心性多発)。臨床的にはこの2つの多発形式を明確に区別することは必ずしも容易ではありませんが、前者による多発の方が悪性度が高く、生存率に及ぼす影響が大きくなっています。肝癌の治療法は、(1)多発性の問題、(2)再発率の高さ、(3)肝機能の重症度、の3点から適した治療法が選択されることが多く、さらに、(4)癌の存在部位(肝表面か深部か)を考慮します。
    下の表は代表的な治療法の長所・短所をまとめたものです。肝癌に対して行われる様々な治療法は、「根治性」「多中心性発癌の起こり易さ」「肝予備能」など、全ての観点を考慮して決定しなければならなく、ただ一つの治療法が最も優れているということはありません。種々の治療法を柔軟に組み合わせて行うこと(集学的治療)こそが、肝癌患者の生活の質(Quality of life)や生存率の向上につながるのです。

    長所 短所
    外科的肝切除 最も根治的
    表在性の癌では治療が容易
    周囲の転移結節を除去できる
    開腹下に詳細な転移検索が可能
    単発なら大型肝癌でも治療可能
    麻酔・手術に伴う侵襲が大きい
    深部の癌では切除部分が大きくなる
    肝機能低下症例では行えない
    医療費が高価
    PEI
    (経皮的エタノール局注療法)
    内科的におこなう簡便な治療
    繰り返し行えば根治的
    深在性の癌では切除より簡便
    機材の準備は最も廉価
    医療費が最も安価
    小型少数(3cm,3個以内)の癌が基本
    薬剤注入状況で効果がやや不確実
    肝表面の癌では治療がやや困難
    USで死角となる部位の治療は困難
    USで描出不能な肝癌(CT,MRIのみで
    しか見えない) の存在
    門脈・胆管流入による副作用あり
    腹水貯留例では穿刺部出血あり得る
    RFA
    (ラジオ波凝固療法)
    内科的に行える簡便な治療
    3cmなら1(〜2)回の治療で終了
    凝固範囲はPMCTより大きい
    穿刺できる腫瘍なら効果は確実
    小型少数(3cm,3個以内)の癌が対象
    大型血管近傍では治療効果不良
    肝膿瘍・周囲臓器熱傷の副作用
    TAE
    (肝動脈塞栓術)
    大型・多発肝癌でも治療可能
    肝機能不良例でも施行可能
    リピオドール併用で診断的意義あり
    根治性が劣り反復治療が必要
    高分化型肝癌には無効
    門脈浸潤・びまん型では治療効果不良
    技術により効果の差あり

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