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○大腸癌腹腔鏡下手術○ 大腸癌腹腔鏡下手術の経験症例数は、2010年03月31日時点で2258例と、2200例を突破し、全国トップの手術経験数を持ちます。2009年の年間症例数は352例に達しました。(なお、当院での大腸癌腹腔鏡下手術の手術件数は関連病院の症例は1例も含まれていません。)

上の図は、ピンクは1年間の開腹手術件数、青線は1年間の大腸癌腹腔鏡下手術件数です。横軸は年間推移を示しています。大腸癌腹腔鏡下手術件数が着実に増加していることが分かります。
従来の手術では10cmから20cmの開腹創が必要とされましたが、腹腔鏡下手術を行うと、3cmから6cm程度の開腹創で済みます。これが患者さんにもたらす効果は、開腹創の縮小化→手術直後の痛みの軽減→早期離床→排ガス、排便の早期化→早期の食事開始→早期退院の図式であり、「低侵襲手術」と証される所以です。手術後の痛みが少ないことを初めとした低侵襲性によりもたらされる術後在院日数の短縮化は、患者さん本人に止まらず、ひいては、全体としての医療費の削減につながるものと期待され、腹腔鏡下手術を含む鏡視下手術は「21世紀の治療法」とまで言われています。 もちろん、癌の手術ですから、腹腔鏡下手術がその本質を犯すものであってはなりません。現時点では、当院での成績は言うに及ばず、世界的にも、また、本邦においても、大腸癌腹腔鏡下手術は、従来の手術と劣らない、むしろ、ある面では従来の手術法以上の成績が発表されています。
私どもの施設での大腸癌腹腔鏡下手術の成績は、実施率(大腸癌手術例に対し、腹腔鏡下手術を行った割合)は本格的に開始した1999年以降では、全体で86.1%、根治度A(癌が取り切れた手術)で91.4%でした。

上の図は、大腸癌腹腔鏡下手術実施率の年間推移です。青線は全体、ピンク線は根治度Aを表しています。1999年以降の実施率は安定しており、その後も増加傾向にあることが分かります。
開腹移行率(腹腔鏡下手術を目的達成まで行うことが出来ず、途中で従来の開腹術に移行した率)は、2007年以降では0.2%、開腹移行を伴った術中偶発症率(腹腔鏡下手術実施中にこれに特有と考えられる合併症を起こし、従来の開腹術に移行した率)は、2007年以降では0%でした。また、偶発症により本来の癌の手術としての価値が損なわれた症例は一例も経験していません。

上の図は、開腹移行率の年間推移です。 2007年以降の開腹移行率は0.2%にすぎません。
長期成績である生存率は、腹腔鏡下手術例と、従来の開腹手術例(1990年以降の大腸癌手術例中、従来の開腹手術例を行った根治度A1339例を対照とする)では、手術例全体では言うに及ばず、進行程度(stageT、U、Va、Vb)別に見ても前者に少なくとも悪化傾向はありません。以上の成績は、海外はもとより、国内のそれと比較しても勝るとも劣らないものです。 ただ、大腸癌腹腔鏡下手術は、高度の技術を要し、かつ、全ての評価が定まった治療とは言えない面もあるので、患者さんに必要かつ十分にご説明した上で、実際の適応を決定する必要があります。
○補完そのT−大腸癌腹腔鏡下手術の適応とならない場合○
大腸癌腹腔鏡下手術の適応とならない場合には次のような場合があります。
非治癒手術例、癒着例、他癌合併例、腸閉塞例、他臓器浸潤例、腹膜炎例、心疾患や呼吸器疾患、他の重篤な合併症の合併例等です。 非治癒手術例とは、大腸癌が高度に進み、癌が取り切れない場合を言いますが、このような場合には開腹創の縮小化が困難であり、開始当初は適応としていなかったのですが、近年はこのような症例でも積極的に大腸癌腹腔鏡下手術を行っています。 癒着例とは、多くは開腹手術の既往があり、おなかの中の腸管癒着が強い例で、癒着の剥離が困難な場合や長時間を要する場合には開腹手術を行います。 他癌合併例とは、おなかの中の他の癌−胃癌等を同時切除する場合で、開腹創の縮小化が困難であれば適応とはなりません。 腸閉塞例は、大腸癌のため腸閉塞状態で手術となる場合で、おなかの中が拡張した腸管で満たされているため適応となりません。 他臓器浸潤例とは、大腸癌が周辺臓器に浸潤して大きな腫瘍塊を形成しているため適応となりません。 腹膜炎例は、腹膜炎の状態で緊急手術となる場合で、機敏な対応が必要で適応となりません。 心疾患や呼吸器疾患、他の重篤な合併症の合併例では、迅速な手術が求められる場合は適応となりません。
○補完そのU−開腹移行例と術中偶発症例について○
開腹移行率とは、大腸癌腹腔鏡下手術を目的達成まで行うことが出来ず、途中で従来の開腹術に移行した率を言います。開腹移行率は2007年以降では0.2%であることは先に記載しましたが、実際の開腹移行例は2010年03月時点で31例です。その内訳は、術中に何らかの偶発症を来した症例が13例、腸管の癒着によるものが11例、腸管拡張例が3例、癌の周辺臓器浸潤によるものが3例、術中の結腸血行障害例が1例でした。 術中偶発症とは、大腸癌腹腔鏡下手術中の予期せぬ合併症を言います。 術中偶発症を来たし、開腹移行を余儀なくされた症例は13例で、血管損傷8例、小腸、結腸損傷は各2例、膀胱損傷は1例でした。2007年以降では、術中遇発症で開腹移行を余儀なくされた症例は1例もありません。 ただ、これらの術中偶発症は大腸癌腹腔鏡下手術時に起こる特有のものではなく、通常の開腹手術の時にも起こりえますが、これを修復するに当たって開腹に移行せざるを得なかったものであり、幸いにも、大腸癌に対する手術そのものに悪影響をもたらした例は1例もありません。
開腹移行率と術中偶発症は大腸癌腹腔鏡下手術の短期的な質を評価する指標になります。つまり、その数字は、低いほど大腸癌腹腔鏡下手術が安全、かつ確実に行われたことを物語っています。
○現時点での大腸癌腹腔鏡下手術に対する考え方について○
大腸癌腹腔鏡下手術は、2010年03月の時点で2258例と多くの経験をしてきておりますが、現時点での考え方を記載しておきます。 マスコミはもとより、この手術の経験のない、あるいは、経験の少ない医師は、大腸癌腹腔鏡下手術を「特別な手術方法」と捉えている向きが未だに多いようです。 もちろん、大腸癌腹腔鏡下手術を、安全、かつ、確実に行うには、多くの経験を積み、高度の技術を通常の技術へと平準化する努力が必要です。 ただ、経験の積み重ねによって、「高度の技術」が「通常の、日常的な技術」へと変化していきます。 当院では、大腸癌腹腔鏡下手術の開始当初、それを遂行するには、「高度の技術」を要していましたが、多くの経験の積み重ねた結果、今では「通常の、日常的な技術」となってきたと自負しています。
我々の位置づけは以下の通りです
大腸癌腹腔鏡下手術は、大腸癌の手術を行うに当たっての「一つの手段、手技に過ぎず」、「特別、特殊な手段、手技ではありません。」もちろん、大腸癌腹腔鏡下手術という手段、手技を用いずとも大腸癌の手術を行うことはできます。 大腸癌の手術に、大腸癌腹腔鏡下手術と従来の開腹手術の区別が存在するわけではなく、それぞれが「相互に補完しあう手術手技、手術手段である」との位置づけです。 それでは、大腸癌腹腔鏡下手術は何のために存在しているか? 「開腹創の縮小化」を初めとした低侵襲手術を実現することにより、術後の苦痛を少しでも和らげ、術後在院日数を短縮することにその目的の多くがあります。 大腸癌腹腔鏡下手術の最大の目的は「開腹創の縮小化」ですが、多くの経験を積んでくると、大腸癌腹腔鏡下手術手技が従来の開腹手術手技よりも安全、容易、確実に出来るようになってきました。脾弯局部や骨盤内直腸の剥離、授動術がそれです。手術手技の点でも多くの場面で大腸癌腹腔鏡下手術が従来の開腹術を超えたと言っても過言ではありません。 医師の中でも、「大腸癌腹腔鏡下手術を行った患者にとって、1年後に何のメリットがあるのか?」との意地の悪い質問をする人があります。我々は即座にこう答えます。「おなかの傷が小さいことを除けば、1年後には何のメリットもないかもしれない。」と。過ぎ去ってしまえば、手術直後の事なんて大きな事ではないと密かに思っている医療関係者も未だに多いと思われます。 我々は、手術直後の患者の0にはできない苦痛を少しでも和らげるために、多大な努力と、日本の医療システムでは費用に計上できない高価な機材を用いて大腸癌腹腔鏡下手術を一生懸命行っています。
「大腸癌腹腔鏡下手術は、多くの経験を積めば、決して特別、特殊な手術ではありません!」
「1年後にはメリットがないかもしれないことに!一生懸命努力しています。」
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