重点医療 高齢者医療

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今、求められる、
高齢者を包括的・全人的に診る医療

高齢者医療とは

高齢者医療とは、高齢者を対象とする専門医療です。高齢者に多い疾患の診断と治療を研究・実践し、高齢者の健康増進・生活の質(QOL)の向上を図ることを目的としています。高齢期の大きな特徴は、脳卒中、認知症、骨粗鬆症など、ADL(歩く、食べる、着替えるなどの日常生活動作)に影響を与える疾患が多いことです。しかも、高齢者はいくつもの疾患を抱えているケースが多く、縦割りの臓器別の診療では患者さんの治療を十分に行うことはできません。そこで虎の門病院は、2015年に高齢者を総合的に診療する、我が国初の「高齢者総合診療部」を開設しました。同部では、老年医学の専門医を中心に、多職種が集まったチームで患者さんを包括的に診療し、身体的側面だけでなく、心理的側面・社会的側面にも目配りした、患者さんを全人的に診る医療に取り組んでいます。

高齢者総合診療部の主な業務
  • 老年症候群への対処(認知症、せん妄、誤嚥、低栄養、転倒、睡眠障害など)
  • 薬物療法コンサルテーション(polypharmacyの対処、向精神薬の適応検討など)
  • 術前評価、術後管理
  • 医療連携(退院支援)など

虎の門病院の高齢者医療への
取り組みとしての高齢者総合診療部

高齢者総合診療部が、各部門の協力のもと高齢者総合診療チームを組織し、各科からのコンサルト依頼に応じて、高齢患者の診療のサポートを行っています。

虎の門病院の高齢者医療への取り組みとしての高齢者総合診療部

これからの日本と高齢者医療

虎の門病院 院長 大内尉義

老年医学における
エビデンスを構築し、
高齢者の多様な在り方に応える
医療を提供していきます。

虎の門病院 院長 大内尉義

虎の門病院が「高齢者総合診療部」を開設したのは2015年のことですが、話はさらに遡ります。当院第2代院長でもある沖中重雄先生は早くから老年医学の必要性を訴え、1962年に彼が中心となって東京大学医学部老年病教室が開設されたのです。当時の状況を考えると、将来の高齢社会の到来を見越したその先見性には驚くばかりです。以来、日本の高齢者の数は増加の一途をたどり、2025年には65歳以上が人口の30%を占める超高齢社会を迎えます。こうした時代の変化を受けて、医療の現場では老年症候群(高齢者に多い、あるいは特有な症状所見の総称)の管理の重要性が認識されるようになり、臨床医学と福祉・介護の共同作業などの新しい展開も見られています。
老年医学の分野では近年多くの研究がなされ、老年医学会は「フレイル」という言葉の提唱や、高齢者の薬物療法ガイドラインの作成などを行ってきました。今後は、骨粗鬆症、認知症、脳血管障害など老年期に起こりやすい疾患の病因と治療法を確立することと、これらの疾患に関するエビデンス(科学的根拠)を構築し、治療のガイドラインを作成することが極めて重要な課題であり、老年医学の使命であると考えます。
日本老年医学会は2017年1月に、75歳以上を高齢者とし、65~74歳を准高齢者とすべきであるという提言を発表しました。この提言の主眼は、高齢者の意識や立ち位置をポジティブなものに変え、超高齢化社会を明るく活力のあるものにすることです。しかし、75歳以上が高齢者という定義はあくまで1つの目安に過ぎません。高齢者は元気な方からフレイルの方まで多様性が大きいことが特徴であり、一人ひとりの生活機能をしっかりと見て、准高齢者、高齢者を判断していくことが大切です。
老化は誰しも避けることができませんが、それならば、健康に老い、充実した人生を送って天寿を全うすること、ひいては健康寿命を長く保つことが理想の人生であり、老年医学とその実践である老年医療の目標といえます。当院は、これからも我が国の老年医療の発展に寄与し、高齢者の多様な在り方に応える医療を提供してゆく所存です。

高齢者に特有な「フレイル」を評価し、
患者さんに寄り添える診療の実現に努めていきます。

高齢者の診療には、若年成人に対する診療とは異なるアプローチが必要です。例えば薬物療法一つとっても、その薬物動態の加齢変化、多剤服用による相互作用、合併症への影響、さらには、薬を忘れずに正しく飲めているかといった、服薬状況にまで配慮する必要があります。また、高齢になると筋力の衰えや食欲の低下など生理的予備能力の低下が見られるようになりますが、最近はこれを単なる老化現象ととらえるのではなく、「フレイル」という言葉で表現するようになっています。フレイルは英語で「虚弱」「老衰」を意味する「Frailty」に由来する言葉です。「フレイル」には身体的な虚弱だけでなく、認知症やうつといった精神心理的な「フレイル」、貧困や独居など社会的な「フレイル」の3つの要素が含まれることから、高齢者総合診療部では「フレイル」の予防や対策の観点からも、患者さんの全体像をみながら診療させていただいております。そのために、他診療科の医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどによるチーム医療を構築し、スタッフ一人ひとりが専門知識とスキルを発揮して、患者さんに寄り添い、全人的に患者さんを支えることを目標に力を注いでおります。また、在宅医療や福祉・介護サービスとの連携も積極的に行い、患者さんが住み慣れた地域で安心して暮らしていかれるようサポートさせていただきます。

虎の門病院 院長 大内尉義

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